西安と言えば、やはり麺。特に冬は温かいスープ有りの麺がおいしいですね(何と、中国ではスープなし麺も定番なのですが)。
今回紹介するのは、「臊子面」(サォズミエン)。
もちろん牛肉麺 ( 牛肉面 ) も有名ですが、実は牛肉麺は西安の名産ではなく、もっと西の甘粛省蘭州の名産です。
臊子麺は、西安の隣にあり陝西省第二の都市でもある、宝鶏(ほうけい・バオジー)市近郊にある岐山(きざん・チーシャン)県が発祥の麺で、その地名に因んで「岐山臊子面」とも呼ばれます。
写真でも分かる通り、スープが真っ赤なのが特徴で、これはなんとラー油の層!!!
数ミリの厚さのラー油でスープが覆われています。見るからに激辛&油っこそうですね!
これは西安人が辛いもの好きなだけではなく、こうすることでラー油が保温膜となってスープが冷めにくくなるからなんです。
と言っても、実はそれほどには辛くもなく油っこくもないんです。
その訳は、黒酢。
黒酢がよく効いた酸っぱ辛い味なので、むしろスッキリしていると言ってもいいほど。そして、この酸っぱ辛いのが西安付近の特徴的な味付けです。
ちなみに、岐山県というのは陝西省の中でもお酢が特産で有名な地域で、ここの黒酢は、(日本でよく知られている)山西省の黒酢よりもまろやかだと個人的には感じています。余談ですが、中国では”黒酢”よりも、”香酢”と呼ばれるほうが多いです。
味は店によっても違いが大きいですが、その差の大部分が、良い黒酢をたっぷり使っているかどうかにかかっていて、ケチらず黒酢を使っていれば、香りも良く、イイ感じに辛さが緩和されておいしいです。
麺はちょっとチヂレて平たい、日本のカップヌードルや チキンラーメンを思わせる麺で、日本人にはなじみのある感じの麺です。
具は、細かく切った数種類の野菜と薄焼き卵、そして味付け肉。一説には、これらの具を「臊子」(サォズ)と呼ぶので、臊子麺となったとか。
名前の由来としては他にも、元々は兄嫁を意味する嫂子(サォズ)が作っていた家庭料理としての麺が始まりで、具を意味する臊子と同じ発音なので、この名前になったという説もあります。
あと、本来の臊子麺は、椀子そばのように一口二口で食べれるくらいの量の小さなお椀で次々と出されるもので(“一口香”と言われることが多いです)、一人で10杯、20杯と食べるタイプの麺ですが、コストや手軽さの関係で普通サイズの椀での提供が定着するようになりました。
高級レストランや本場の岐山県では、本来の椀子そばタイプで出す所もありますけど、値段は高めです。
とはいえ、最近行ったあるデパートのフードコートでも椀子そばタイプをリーズナブルな値段で売り始めましたので、これから段々と増えてくるかもしれません。
パッと見、真っ赤で、どんなに辛いんだろうと思えますが、食べてみると意外にスッキリした味わいの臊子麺。西安に来られたら、陝西省を代表するこの麺を、ぜひ一度食べてみてくださいね。